わたしのマチじかん[3]

イメージ:わたしのマチじかん[3]

Illustration : Sakamoto Nao

魔法をかけて欲しい時

 6年ぶりくらいに、知人と会う予定が入った。仕事で札幌に来るという。しかも、明後日。まずい…6年という自然の時間経過には抗えない。何というか、とにかく「変わらないね」と言われることだけを所望する。もっと早く言ってくれれば、札幌の3年で出来上がった腹回りの肉なども何とかしたのに(本当?)。ああ、何を着て行こうかな、などと考えた結果、1つはプロの手にゆだねることを思いつく。
 JR札幌駅の東改札口に迎えに行くことになったので、少しだけ早めに駅にやってきた。エスカレーターで地下に降り、アピアへ。ドキドキしながら予約していたお店に入り、名前を告げる。「今日はアイメイクですね」はい!電車に乗れるギリギリのレベルで眉だけ描いてきました!今日は大事な約束があって!6年ぶりで!と一人でまくしたてる。
 マスクの外側に見えている肌の色や、洋服の色で瞬時に判断しているのだろうか。「お客様にはこういう色が似合うと思うのですが、このアイシャドウ使ってみていいですか?」と嬉しい提案。普段あまり使わないピンク色に心が躍る。自分ではできないプロのテクニックで、美しく描かれるアイラインや、「涙袋を強調しちゃいますね」とトレンドのワンポイント。自分で涙袋メイクしたら目の下のクマにしか見えないのに、さすがプロ。
 顔の1/3を変えただけで、こんなにも気分が違うなんて。マスクから見えるその輝きに嬉しくなる。たった10分だもん、うっかりメイクするのを忘れても、駆け込むのに最適よね、と想像。化粧は自己満足のものかもしれないけど、やはり自分を幸せにしてくれる、素敵な魔法だ。
 東改札口に向かって歩く。電車が到着するまでもう少し。その前にもう一度鏡を見に行った。ふんふん、と鏡の中の自分を覗く。あれ?何だか眉だけ浮いている?そうだ、アイメイクはプロ仕様だけど、眉は自作だ。家を出る前に30秒で描いた眉。プロのメイクと合わせるなら、もう少し丁寧に整えてくればよかったなあ。まあ、そんなところまで誰も見ないか、などと思いつつも気になるオトメ?ゴコロ。
 改札の向こうからは、見知った顔がやってくる。ああ、少し年齢を重ねた好ましい姿。わたしはどういうふうに見えるかな。前髪でやや眉を隠しつつ、手を振った。

◎アトリエはるか[アピア/センターB1F] SHOP INFO SHOP INFO
エッセイスト 金澤佑樹
金澤佑樹エッセイスト

旅エッセイスト・ライター。公共交通機関を使って、ビールを飲みながらあちこち旅するのが幸せ(時々はノンアルでクルマ)。関東から札幌に移住して3年の札幌観光大使。