わたしのマチじかん[8]

イメージ:わたしのマチじかん[8]
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ガラスの中の
美味しいきらめき

 「瓶詰」たるものに、私は弱い。あの透明なガラスの中に閉じ込められた、食材そのものの美しい色や、彼らが混ぜ合わされた独特の色彩。何よりも、瓶のふたを開ける時のワクワク感。缶や袋に詰められたものは、何となく味を想像できるけど、「瓶詰」の場合はそれを知らないこともある。
 そんなウキウキする瓶が、きれいに並んでキラキラ見えた。その店には出汁をとる素材そのものから、乾物、濃い色をしたジュース、お酒まで様々揃っている。とろとろ歩きながら、色々と手に取る。これで出汁を取って煮物を作ったら美味しいだろうなぁ。この醤油は生まれ故郷のだ!たまんないね。両方使って何を作ろう。あれ、この明太子のマヨネーズソースは、茹でたじゃが芋にかけてすぐ食べられるね。ん?かつおのなめ茸ってご飯炊けば、それだけで最高じゃない?
 ちょっと待って。出汁から料理を作る気だったのに、いつの間にか「ご飯炊いてこれをのせれば」という方向性になっている。うわぁ、ここは人のココロを容易に動かす「食」たちの集まりだ。瓶詰を2種手に取ってレジへ向かう。
 今夜はまずツヤツヤのご飯を炊こう。人は難しいことより、簡単なことの方に流れやすい。カバンにそれらを入れると、さっき仕事の打合せをした相手から、もうメールがきていたことに気が付く。とりあえずスマホで返事をしたい。歩く人の流れを目で追って、どこか立ち止まれそうな場所を探した。
 いや、この人混みでは無理だ。あ、そうだ、と思い出して太陽の広場を目指す。少しだけ腰掛けられるのが、今はちょうど良い。メールを再度読み、取り急ぎの内容だけ返信した。よし、と顔を上げる。駅構内へ急ぐ人、大きな買い物袋を大事そうに抱える人、楽しそうに笑い合う高校生たち。彼らを見つめる広場のマネキンは、寒くなった外の気温を感じることなく、ぬくぬくの冬服を纏っている。あ、そのコート可愛いな。あれ?今度は自分がガラスの中に入りこんだみたいだ。何だか不思議な気持ち。ドームから降り注ぐ光を見上げながら、瓶の中を楽しんだ。さあ、帰って美味しいご飯を炊こう。

◎久世福商店[アピア/センターB1F] SHOP INFO SHOP INFO
◎太陽の広場[アピア/センターB1F]
エッセイスト 金澤佑樹
金澤佑樹エッセイスト

旅エッセイスト・ライター。札幌の魅力に取りつかれ、関東から移住して4年目の札幌観光大使。札幌を中心に、北海道内をあちこち旅してエッセイを執筆している。